横断歩道を渡ろうとしている歩行者が「お先にどうぞ」と譲ってくださった際、車両側が「譲っていただいた」からといって進行してしまったら違反になってしまうのでしょうか?
ちなみに警察庁のホームページには歩行者妨害の罰則等について下記のように記載されています
○ 罰則等
・横断歩道等における歩行者等の優先
罰 則 3月以下の懲役又は5万円以下の罰金等
反 則 金 大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
基礎点数 2点
・横断歩道のない交差点における歩行者の優先
罰 則 3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反 則 金 大型車1万2千円、普通車9千円、二輪車7千円、原付車6千円
基礎点数 2点
普段、見かけるケースとしては信号のない横断歩道で歩行者がいるのに止まらないケースや信号がある横断歩道でも歩行者の前を通り過ぎる車をよく見かけます。
海外では(イギリスなど)歩行者優先が徹底されている国が多くありますのでインバウンドで訪日している旅行者の方が自国と同じ感覚で横断歩道を渡ると危険な場合があります。
もちろん日本も歩行者優先ですが徹底されているとはいえないのが現実です。
ペーパードライバー講習中は「歩行者の後ろは通っていいよ」と言っていますがギリギリの所を通ると危ないですので歩行者との適切な距離をちゃんと確保したうえで「後ろは通っていい」と教えています。
※もちろんスピードはしっかり落として進行します。
歩行者の前を通ると危ないのでダメなのは当然なのですがどれくらいの距離があれば通れるのでしょうか?
歩行者の通行を妨害しなければよいのか安全な距離があればいいのかは難しい部分だと思います。
皆様も経験があると思いますが歩行者用の信号が点滅し始めたら急に走り出す方はたくさんいます。
歩行者との距離をとっているつもりでも走り出すことを考えるとかなりの余裕をもって歩行者との距離をとらなければ危険ですので、渡っている歩行者だけでなく渡ろうとしている歩行者がいたら歩行者が優先でいいと私は思っています。
ペーパードライバー講習を受講されている方はスムーズに進行できない場合が多いため、歩行者が走り始めたらすぐに危険な距離になってしまうことがあります。そのため横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいたらストップと教えています。
ただし大きな交差点の横断歩道の場合はしっかり歩行者との距離があるのに進行しなければ後方の車両が迷惑してしまいますので臨機応変に判断することと必要だと思います。
では歩行者の方が「お先にどうぞ」と譲ってくださった場合はどうすればいいのでしょうか?
違反切符を切られて、後日違反が取り消された事例もありますが状況によって判断が変わると考えなければいけないと思います。
「お先にどうぞ」と手で意思表示を歩行者の方がしてくださったとしても違反者を取り締まるために見張っている警察官は「虫を払っただけかもしれない」と言うかもしれません。
曖昧な意思表示の「お先にどうぞ」は現場の警察官の判断によって違反か違反ではないか判断されると思いますが、違反者を取り締まるために見張っている警察官にしてみれば取り締まりの対象にしたいのではないでしょうか。
またご年配の方は横断歩道を渡るのに時間がかかるため親切心で譲ってくれたりします。
横断歩道から歩道に戻っていただいたり後ろを向いてくださったりしていただけたら現場の警察官も渡る意思はないと判断していただけると思いますが、横断歩道の途中で譲ってくださったりする場合があります。
正直、このケースはご年配の歩行者が横断歩道に取り残される可能性がありますので譲ってくださっても先に渡っていただきたいです。
実際にペーパードライバー講習中にあったケースですが、大きな交差点の横断歩道の真ん中でご年配の方が譲ってくださりました。しかし私が「先に渡ってください」と逆に手で意思表示したところ、ご年配の歩行者の方が全く動かないで車に先に行くように促してこられたことがあります。
歩行者用の信号が点滅し始めたためご年配の歩行者が横断歩道に取り残されるかもしれないと思い、受講者の方に先に行くように指示を出しました。
このケースは警察官が現場にいたら取り締まりの対象になっていたかもしれません。
※現場に警察官がいたらご年配の歩行者の方に先に渡るように誘導してほしいですが…
このケースの場合、歩行者のすぐ前を進行したのと歩行者用の信号が点滅し始めたため急いで渡り始める可能性があります。
しかし渡らないで取り残される可能性もあります。
親切心で譲ってくださったと思いますが横断歩道で取り残されたり違反になってしまうので先に渡っていただきたいです。歩行者が先に渡ることを拒否されると大変困りますので歩行者の方にもご理解をいただきたいと思います。
このように横断歩道の中にいるのか横断歩道の外の歩道で渡り始めようとしているところなのか、どのような「お先にどうぞ」の意思表示をされているのかによって違反と判断される場合があります。
違反が取り消された事例もありますが「お先にどうぞ」と譲ってくださって進行して違反と判断される場合がありますのでお気をつけてください。
違反か違反ではないかの前に、危ないか危なくないかの方が重要だと思いますが違反と判断するには法律の解釈が必要ですので法律の専門家じゃなければ正確な判断は難しいのではないでしょうか。
○ 道路交通法の条文
(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。
(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
(横断の方法)
第十二条 歩行者等は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。
2 歩行者等は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。
(横断の禁止の場所)
第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。
条文を載せてみましたが難しいです。
結論をいいますと歩行者が譲ってくださっても「歩行者の方がお先に渡ってください」と返すのが正しいのではないかと思います。
それでも歩行者の方が渡ってくださらなければ窓を開けて「違反になってしまいますのでお先に渡ってください。お願いします。」と言うしかないのではないでしょうか。
譲ってくださっとしてもその状況によっては違反になったり、危険な状況になることがあることを車両も歩行者もお互いに意識していなければいけないと思います。